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■インフルエンザ・ウイルス付着の不思議;実利的予防策への教訓 [ウイルスシステム]

インフルエンザV2.jpeg

●インフルエンザ・ウイルスのミストが感染者の咳によって外気中に吐き出され,
次のターゲットに捉えられるまでの過程にはいろいろ未知なことが多い.
一般にはミストの直径は5マイクロメートル程度で,これが気道に吸引され
粘膜にあるウイルス・レセプターにウイルスが捕捉される”飛沫感染”を
感染経路とすると考えられている.しかし手洗いの励行が奨励されている
ように,実際は接触感染的な経路が予防を考える上では極めて重要なのだ.
この場合のウイルスの”生存”(感染可能な活性の維持という意味;ウイルス
は生き物でない.それゆえ生存の語を使うのは基本的誤りといった不毛な
議論はこの際棚上げとする)は付着する物体によって何らかの違いが生じる
のだろうか.都内の電車通勤のような感染環境を想定すると,このことは決定的
意味を持つことになるだろう.
●大方の直感では,付着物によらない単純な時間依存性が予想されるかも
しれない.しかし,Bean等の以下の実験結果は,その予想を完全に否定
する驚くべき事実をしめしている.
J Infect Dis. 1982 Jul;146(1):47-51.
Survival of influenza viruses on environmental surfaces.Bean B, Moore BM,
Sterner B, Peterson LR, Gerding DN, Balfour HH Jr.
A型,B型の間の差が無いのは予想された結果であるが,手や平滑な表面;
ステンレス・スチールとかプラスチックに付着したインフルエンザ・ウイルスが
24~48時間生存していたのに対して,布とかティシュ・ペーパー等に付着した
場合はそれより大幅に短い8~12時間以下しか生存できなかったことである.
さらに接触感染の可能性を示唆する結果としては,相当数のウイルスの
ステンレス・スチールから手への移行が24時間は確認されたこと,
ティシュ・ペーパーから手ではそれが15分程度で有ったこと,一旦手に
移行したウイルスは5分程度はサバイバルすること等が認められたこと等
が挙げられる.
●この機構の説明は極めて困難であるが,現実的な教訓としては現在奨励
されている対策の根拠に充分なりうるものであろう.布上でのウイルス・サバイバル
が著しく低くなることを考えれば,感染者の咳は布で覆うことが効果的となる.
皮膚や平滑面からの除ウイルス処置は汚染リスクが予想される場合は常に
励行することが重要ということになろうか.
 
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新型インフルエンザの生態に関する素朴な疑問:季節変動等 [ウイルスシステム]

インフルエンザV3.jpeg
極小唾液ミストに閉じ込められたインフルエンザ・ウイルスのイメージ

●予想外に早く日本国内で新型インフルエンザ(H1N1/2009)の患者数が
増大してきているという.今年7月24日までの患者総数は厚生労働省
確認分としては5,022名が報告されていたが
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/case-j-2009/090724case.html
8月に入ってプロ野球や高校野球関係者,サマー・イベントや合宿宿舎で
発症例があいつぐ中,21日午後,ついに新型インフルエンザの全国的
流行開始宣言が国立感染症研究所より出された.
その根拠は,1週間の患者数が1施設あたり1人を超えたこと,この値が
季節性インフルエンザ流行開始の目安となってきたことにあるという.
患者総数は推定11万人で冬季以外ではかなりの数といえよう.
 この流行開始宣言を素直に受け取って良いのだろうか.もちろん必要な
対策を緩めろと主張しているのではない.日本本州におけるインフルエンザ
の夏季流行が従来観察されなかったこと,それが今回の新型では流行に
入ったとなれば当然それに関する分析を踏まえての発表でなくてはならない
と思うからだ.

●そもそもインフルエンザの季節変動は何に起因するのだろうか.
感染者の飛沫に含まれるウイルスは感染環を形成する場合には,
いくつかのルートを経て次のターゲットの上部呼吸器に進入し増殖を
開始する.この最初の浮遊状態ないしは固相との接着状態で重要なのは
ウイルスの物理化学的特性と周囲の環境要因である.この周囲の環境要因
として議論されて来たのが平均気温とか湿度,日照時間,紫外線量,
昼間と夜間の温度差など,いずれも夏季と冬季で異なる気象要因であった.
これらの研究が示しているのは冬季での流行という疫学的な統計に一致して,
相対的に弱い紫外線,低温,低い相対湿度がウイルスの生存に有利という
結論である.
(例えば以下のような文献が参考になるが,PubMedを適当なKWで
検索すると他にも多数の文献が参照できる.
▲Influenza virus transmission is dependent on relative humidity and temperature.
Lowen AC, Mubareka S, Steel J, Palese P.
PLoS Pathog. 2007 Oct 19;3(10):1470-6.
▲Survival of influenza viruses on environmental surfaces.
Bean B, Moore BM, Sterner B, Peterson LR, Gerding DN, Balfour HH Jr.
J Infect Dis. 1982 Jul;146(1):47-51.Links)
物理的存在としてのA型インフルエンザはどの亜型も形態的にはきわめて
類似した構造を有している.ゲノムであるー鎖RNAは大きさの異なる
8本の分節に別れていて各々がヌクレオキャプシドに包まれ,転写酵素を
持っている.この周りを2種類の表面糖タンパク;HAとNAを統合した
脂質2重層が取り囲むが,ビリオン(完全なウイルス)はその他にも
数種のタンパク質を含んでいるというのが共通構造である.物理的
環境に影響されるのはこうした物理的存在としてのウイルスであり,
宿主に感染してから受ける宿主側からの影響とは分けて考察する
必要が有る.
●夏季という季節要因は各インフルエンザに対して平等に作用すること,
その影響を受ける側のインフルエンザも物理的実体としては共通している
とすれば,従来型の季節変動とは異なる新流行パターンが生まれたかの
ような発表は問題が無いのだろうか.現在の患者数の増大というのは
新型ということを考えれば充分予想できる範囲のものであろう.なぜなら
無いに等しい弱い免疫プール防衛網は大量ワクチンの接種でもしない
かぎり新型インフルエンザにより簡単に突破出来る状況にあるからである.
新型インフルエンザという敵は夏と言う不利な環境要因の中でも,人間活動
の感染ポケットをいち早く見つけて爆発的感染の足場をできるだけ拡大
しようとしているのであろう.この感染の拡大の規模の大小の上に秋・冬
からの流行が開始されることになる.
●とすれば必要とされる対策が戦術レベルのみから判断されるのではなく,
戦略レベルから見てどうかというのが最大の課題であろう.日本のワクチン
製造量は当初の2500万人分から大幅に下方修正されて,1500万分
に後退している.この程度のワクチンで敵を向かい撃てるのだろうか.
しかもこの少ないワクチンをいつ,どこで,だれに,どれだけ接種するかの
方針も定かではない.予防医学の観点から流行規模を最大限に抑制する
という観点に立った専門家からの大胆な提言も聞こえて来ないし,
学校での集団接種の是非すら検討の外である.アメリカでは感染の火薬庫
となるであろう学校を中心にワクチン接種を検討中という.誰が死んで,
誰が生きるかといった従来の議論を乗り越えた根本的提起のように思える.
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新型インフルエンザ(H1N1)の死亡率はどれぐらい? [ウイルスシステム]

The current situation constitutes a public health emergency
of international concern.However, more information is needed
before a decision could be made concerning the appropriateness
of the current alert level.

WHOの25日の緊急会議の結果は上記のように国際的
公衆衛生上の緊急事態としながらも,レベルを引き上げるには
なおデーターが不足しているというもので有った.この結果は
テレビでも報道されたので胸をなでおろして居る方も多いのでは
ないだろうか.しかし中日新聞の25日付け記事によると
”米国の疾病対策センター(CDC)は,メキシコと国境を接する
カリフォルニア,テキサス両州で計8人の感染を確認,
いずれも豚との接触がないことから人から人への感染と断定した”
とある.これはもはやブタ・インフルエンザではなくヒト・ヒト感染
を引き起こす新型インフルエンザではないのか!
 と言っても,患者数?1000人に対して死者が70人〜というのは
この新型インフルエンザの毒性を決定する数値としては
いささか問題が多すぎる.文字通りこれを基に算定してしまうと
10%に迫るような恐ろしい感染症ということになってしまう.
ところがヒト・ヒト型とするとどれだけの感染者が出たのかは
もはや分からないはずだ.臨床症状が軽いまま治癒して
しまった場合も考慮すると,この新型ウイルスの毒性を決める
ことは今のところ出来ないと言わざるを得ない.
 H5N1のトリインフルエンザは異様なまでに死亡率が高かった
ことは確かであるが,総ての新型インフルエンザが強毒性
と言うわけではないことも考慮に入れておく必要がある.
トリとの接触が不可欠な高病原性トリインフルエンザの
患者数の把握とヒト・ヒト型の弱毒性新型インフルエンザの
患者数の把握とは困難さが全く異なるということである.
ただ新型に関しては免疫を持っていないから,一旦流行
し出すと多くの感染者が生ずるであろう.不幸にして毒性が
高かった時は,WHOの警告もよりシビアなものに成るに違い
ない.CDCやWHOの今後の疫学調査の結果が待たれる.

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ヒト新型インフルエンザの可能性? [ウイルスシステム]

 今月24日ロイター電の伝えるところによると,メキシコでは新型
インフルエンザによる感染が急速に拡大しているという.死者は
まだ確定的では無いが,政府関係者によると少なくとも20人はこ
の新型ウイルスによるもので,さらに40人の死亡原因との因果関係
が疑われているとの発表がなされた.
 これとは独立に,先月末にカリフォルニア州サンジエゴ周辺で
新型ブタインフルエンザが二人の小児から検出されていたが,
WHOはこの両方が同一のタイプ;H1N1であることを確認した.
 この感染症の衝撃の大きさはWHO緊急会議召集を見ても
容易に理解できる.人型インフルエンザの降臨の疑いが否定
出来ないからである.日本時間の4月25日夜のWHO会議が
パンデミックの警戒レベルを現在の3から4に引き上げるのかどうか,
世界中が今固唾を呑んで注目している段階にある.
 日本でも幾つかの自治体ではすでに対応を検討しつつある.
警戒レベルがフェーズ4に引き上げられれば政府は直ちに
首相を本部長とする対策本部を設置することになるが,
空港では熱センサー・モニタリングを強化するなどして
事実上警戒レベルをあげつつある.
 しかし日本は生憎連休モードに入り出国ラッシュが始まって
しまっている.急激な状況変化が起こった場合どうなるのだろうか.
気になるところである.

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H5N1高病原性トリインフルエンザの現状はネットを見ないと分からない [ウイルスシステム]

前回の日記でH5N1高病原性トリインフルエンザの拡大について触れましたが,日本のマスコミは依然として不可解な沈黙の中になりを潜めています.
しかし,一旦ネットの世界に目をやると騒然たる現状が手に取るように分かるでしょう.特に以下のHPはまさに超人的てもいえる努力で,東アジアの惨状を日本語で僕らに伝えてくれています.毎日数時間をついやして現地の報道をチェックすることがどれほど大変なことか,ぜひともアクセスして確認してみて下さい.
http://homepage3.nifty.com/sank/jyouhou/BIRDFLU/index2.html

管理人は小樽市保健所長外岡氏で,氏の記者クラブでの講演を読むとこのパンデミック・ウイルスへの並々ならぬ危機感がよく分かります.

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パンデミックは時間の問題か;きわめて危険な状況 [ウイルスシステム]

 インド東部西ベンガル州で高病原性の鳥インフルエンザ感染拡大が一向に終息する気配が無い.1月20日時点での報道では8万5000羽のニワトリが感染症で死亡したという.
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2337756/2529950

 初期段階の封じ込めに失敗した原因の一つがニワトリ殺処分の不徹底である.マレーシアのニパ・ウイルスの発生では軍を総動員しての豚の徹底した殺処分となった.結果マレーシアの養豚業は壊滅的な打撃を受けたがニパ・ウイルスの感染は終息した.未知のウイルスで有ったニパと違って,検査方法も確立しているはずの鳥インフルエンザで最初の大量死報告が4日,病原ウイルスが同定されたのは10日以上経た15日である.しかも今もってニワトリ処分の方針に住民の一致した賛同が得られていないことには愕然としてしまう.
 26日の報道では感染は隣のバングラデシュに飛び火し,感染範囲は農村部から1400万都市圏人口を持つ州都コルカタに迫るまで拡大してきている.高濃度のウイルスにさらされた人がつぎつぎと発病したらどうなるのか.ウイルスがヒト型に変異する極めて危険な状況が刻々と迫ってきていると言わざるを得ない.
 

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新型インフルエンザの登場はいつ? [ウイルスシステム]

 マスコミから新型インフルエンザの記事が消えたように思うのですが気のせいでしょうか?トリ型で有っても,多量のウイルスを吸い込むと発病することから,一時養鶏業者の対応もまずさが話題となりました.
 トリ型がヒト型に変異するためには,哺乳類のようなヒトにより近い動物に感染する必要が有ると言われています.その一番の候補は通常はブタで,養鶏と養豚が混在するような環境は人類殲滅のための最悪の武器製造工場と言えるでしょう.
 どことは特定しませんが,このような環境はアジアでは珍しくはないはずです.それに渡り鳥の行動圏が重なると,武器製造工場の潜在能力の範囲はぐんと拡大するでしょう.
 新型インフルエンザの脅威については3月の日記にメモしましたが,医療確保の問題をはるかに越えた社会的危機となるはずです.致死率がどのぐらいいに収まるかは不明ですが,6割を越えるとエボラ並ですから中世のペストも顔負けの未曾有の経験です.

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