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呪われた一日 [ペットとの日々]

 今日は一日碌なことが無かった.始まりは昨夜からかもしれない.
夕食の準備がとうに出来なくなったお袋のため,コンビニであれこれ迷った末適当な素材のものを買って帰った.急がないとお腹が空いて気の毒と思い,毎日の薬も後にしてとりあえず部屋に入ろうとしたらはた迷惑な近所のお節介婆さんがあわてて出て行く姿が目に入った.不吉な予感がしてがらりと戸を開けるとびっくり,むしゃむしゃと古そうな油物をお袋がむさぼっているではないか.今日は女房が会議で遅いのでしかたがないが,夕食は会話の場でも有るし,だいいち栄養や健康のことを考えた食事で無いと必ず老人の場合はそのつけがやって来る.くだんの近所のご夫人には食事を気まぐれでお袋に差し入れしないよう再三お願いしてあるのにこちらの意見に耳を貸そうとしないのが不思議だ.ついに耐えかねて女房が食事代は幾らになりますかと聞いたところ,それこそ烈火の如く怒りだし”教授が何だ!偉そうに.旦那を今此処に連れて来い”とどなってこの話は出来なくなった.それからは道で会っても後戻りしたり,物陰に隠れたりと陰険極まりない.確かに僕は大学の教授をしていたがそれが何か不都合なことでもあるのだろうか.気に入った人間には”よう!社長”とご機嫌をとっては嫌われている手合いである.幸福そうに見える家庭に介入して撹乱するのが楽しくてしかたがないというのが見え見えで,他にも沢山この類のことが有ってお袋に注意しても上の空のことが多かった.しかし,昨晩はこちらの寛容の限界を越えて思わず”乞食のようなことをするな.残飯みたいなものを食べて.今此処でゴミ箱に捨ててしまえ.ひとの苦労も知らないで”と怒鳴ってしまった.驚いたようなお袋の顔が残って後味が悪く,夜何度も目を覚ましてしまった.明けて今日である.5時近くに起きて簡単な朝食をすませ,連載小説;神宿の最終回を読んで外に出ると未だ外は真っ暗である.毎日工房でリラが待っているので遅くも7時前後には行かなければならないのだ.工房の玄関の鍵を開けるともうその音を聞きつけたリラの悲鳴のような声が響いて来た.やれやれと思って部屋に入ると何と黄色の洪水で,食いちぎって破り捨てたペットシーツが部屋中に散乱していて愕然とした.昨日まではこのような荒れよう無かったのに!気をとり直して外のリラ小屋に暖房を入れ,朝食の固形飼料とトッピングのササミを置いてリラを移動させ,部屋を清掃して様子を見に行って見た.何と言うことか.トッピングだけ食べて固形には手をつけようとしないのだ.今まで無かったことが次々と起こる.定例の散歩はこれといった変化も無かったが,その後も固形はさっぱり,そのままにしてリラ小屋の近くで仕事を始めるとうるさく悲鳴を上げて気に障ってしかたがない.仕事はリラ小屋の周囲の土砂の運搬で,リラにも面白いのでは,と思ったのが誤算だった.無視して仕事をしていると,ついに唸り声を上げて恐喝を始めた.さすがに大声で叱ったがめげる様子は無い.しかたがないのでまた散歩,これを繰り返している内に昼近くに成った.大学在職中の友人がたまたま来て,昼食に出かけることにしたが,気になったので小屋の中を覗くと固形を蹴散らして部屋にばら撒いているのには驚いた.甘やかしてもしかたがないので小屋に閉じ込めて外出することにした.(続く)

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