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物語の可能性(1)未知領域拡大の異なるベクトル.A

想像力に基づく未知領域なら,自由にどのような世界でも創造できるかと言うとそうではなさそうです.人間の想像力というものも実は時代的な制約の中でしか飛翔出来ない.現実世界と一般に受け入れられたものと,想像世界との関係も正誤の関係で結ばれているとは限らないことはコロンブスの”新大陸発見”を見れば明らかです.世界観の大変換というものを経験したことがない僕等はその衝撃がどれほどのものか理解できないところが有るのですが,当時のヨーロッパ人の常識を前提にすればその衝撃の大きさを想像できるかもしれません.陸地は円盤状の平面であり,北と南の大洋は氷と炎の暗黒に閉ざされていると思いこんでいたのですから.わずか500年前のことです.大西洋の端を目指して出航した船団の乗組員の多くが,陸地が視界から消えたとき泣き出したと言います.もちろん彼等が気弱だったからではありません.その逆だったとしても彼等の恐怖は船乗りの豪胆さを超えるものだったでしょう.
 1492年10月12日午前,幾多の苦難を乗り越えて船団はついにバハマ諸島の小島に到着しました.緑が生い茂る島に到着した時彼らは新しい未知に遭遇することになります.そこには彼等が想像していた東方の人々ではなく,黒い髪,裸身を白や赤に塗り,不思議な言語をあやつるアラワク族が生活していたのですから.
 コロンブスの到着からヨーロッパ人の世界観は大転換しました.未知領域の拡大です.しかし彼等の文化そのものは変わりませんでした.その後のアフリカ大陸を巻き込んだ”新大陸”蹂躙の歴史をたどるのは憂鬱なことだし,またそれはこのメモの関心からはちょっとそれるのでふれません.言いたいことは何かというと,未知の拡大がこのような現実世界の拡大と結びついている場合があるということ,そしてこの場合は偏狭な想像世界が現実によって駆逐されるということです.しかし未知領域の拡大は外側に向かうベクトルがすべてではありません.

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