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店頭のボルゾイ [ペットとの日々]

トルストイの「戦争と平和」にナターシャ達が狩りに興ずる場面が出てきます.沢山の勢子と共に狩り犬達が獲物をおいつめる役割を演ずるのですが,その貴族達の友人がボルソイでした.遊興にうつつをぬかす貴族とその良き友人であるボルゾイという組合わせは,ロシア革命成功後,ボルゾイに悲劇をもたらしました.根こそぎ殺しつくすという惨劇を止めるものもなく,ボルゾイはこの地上から消滅する危機に瀕したのです.が,幸いなことにこの”地上で最も美しい犬”はロシア以外の大地で生き延びることが出来ました.
 一度見たら忘れることの出来ない気品が(確か調布の公園で見かけたのが最初だったと思います),ボルゾイの悲劇とあいまって僕の脳裏に焼きついていたのですが,その姿をこの地方都市のペットショップで見ようとは想像もしていませんでした.
 朝工房に出かける途中に小さなペット・ショップが有って,そこに何やら疲れ果てたような痩せた大きなイヌが曳かれて行くのです.とてもボルゾイとは思えないような悄然とした様子ですが,いくぶん猫背の中に漂う気品はボルゾイ以外考えられません.一日中そのことが気になっって頭を離れず,結局帰宅の途中で事情を聞くことに決めました.
 ペット・ショップのガラス戸を開けると中は4畳半か6畳程度,そこにまぎれもないボルゾイが生まれたばかりの6匹の子供達と金属製のサークルの中に立っていました.親切そうな店員が応対に出てきて,あれこれ話す内に事情が分かって来たのですが,どうやらこの母親のボルゾイは子犬を供給するために飼われているようです.今回が2回目の出産とか,”女性は産む機械”とか放言した政治家の冷言が頭をよぎりました.”狭い環境ではなく,広いところでこの母親のボルゾイを生きさせてあげたい,僕の敷地が広いとは言えないが走り回るだけの広場はある,ブリーダーの都合も考慮してなにがしかで譲っていただけないか”と言ったことを伝えてこの日は店を後にしました.人懐こいボルゾイの澄んだ瞳と,柔和な表情が柔らかな毛の感触と共に忘れられません.
 どうなることかブリーダー次第ですが,これからが有る子犬達はともかく母親だけはなんとか有り金をはたいて一緒に家に帰りたいと願っているのですが・・.


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